第7期の会長に就任しました理化学研究所の田原です。2018年9月から2年間分子科学会の会長を務めさせていただくことになりました。
長い歴史を持つ討論会であった分子構造総合討論会と分子科学研究所の設立に大きな役割を果たした分子科学研究会とを母体とし、分子科学会がスタートしたのが2006年ですから、本学会も設立から早10年以上がたったことになります。歴代会長、幹事、運営委員の方々の努力、またすべての会員の方々の活発な活動のおかげをもちまして、学会として確立し、現在発展期に入った段階だと考えています。学会活動を通して分子科学の良き伝統と清風の気風が受け継がれ、時代とともにそれが発展し、さらにそのような中で若い世代が生まれ、育っていると思っております。
分子科学会は分子構造総合討論会がその源の一つであるように、その最も重要な事業は討論会です。また、分子科学会では若手研究者の支援、電子ジャーナルの刊行、優秀な業績を挙げられた研究者の顕彰などを行っています。さらに、電子メールを活用した分子科学速報は情報共有のためのサービスとして会員の皆様に活用していただいています。私といたしましてはこれらの事業を継続しつつ、改善すべき点を改善し、さらにより良い活動にしていくことが重要だと考えております。
分子科学会の国際化も進んでいます。実際、分子科学討論会には日本人だけでなく各国の研究者が参加するようになってきています。サイエンスに国境なし、という言葉がありますように、本来科学に国の垣根はありません。ですので、このような国際化は大変望ましいことです。討論会の主たる目的はサイエンスに関する深い議論であるということとうまくバランスを取りながら国際化を自然な形で進めて行きたいと思っています。その一環として今年度から分子科学討論会に国際セッションを設けました。また、日本化学会年会においては、日本化学会の物理化学ディビジョン、理論化学・情報化学・計算化学ディビジョンとの共同事業としてアジア国際シンポジウムを開催しています。
このような考えに基づいて、第7期では以下の5つの方針の下に学会を運営させていただきたいと思っております。
- 分子科学会の良き伝統に立脚しつつ、自由闊達な雰囲気のもと持続的な発展を目指す。
- 分子科学会の活動の根幹である討論会の充実を最重要視する。
- 事業を基本的に継続しつつ、問題点を修正し、さらに良いものにする努力を行う。
- 事業をむやみに拡大させることなく、将来を見据えて健全財政を堅持する。
- 国際化を自然な形で進める。
素粒子物理と核物理などの一部の分野を除く自然科学のほとんどの領域は「分子を取り扱う科学」であると言えます。その意味で、最も基礎的な立場に立脚して分子の振舞いをその原理から解き明かそうとする分子科学の重要性は現在ますます重要になっていると思います。今後とも分子科学会の活動へのご理解とご支援をいただくようお願い申しあげます。
2018年9月1日
分子科学会第7期会長 田原 太平