第9期の会長を拝任いたしました、東京大学の佃です。会長就任にあたり、一言ご挨拶申し上げます。まずは、コロナ禍で先の読めない時期に学会活動を支えてくださいました、第8期会長の大島康裕先生をはじめとする幹事・運営委員の皆様、討論会実行委員の皆様には、会員を代表して篤く御礼申し上げます。また、中嶋敦先生を実行委員長とする実行委員の皆様のご尽力によって、第16回分子科学討論会が完全対面形式で実施できたことは、対面での交流の重要性を再認識する良い機会となりました。心より感謝申し上げます。依然として予断は許さない状況ですが、海外との対面での交流も再開されつつあり、前向きで明るい兆しを感じておられる方も多いのではないでしょうか。
分子科学会は、分子構造総合討論会と分子科学研究会とを母体として、2006年に設立されました。それ以来、「分子科学の研究および教育の振興をはかり、もって学術、文化の発展に寄与する」ことを目標として掲げ、着実に発展してまいりました。分子科学会の最も重要な役割は、会員同士の交流を通して、分子科学を深化させ、新しいサイエンスを芽吹かせ、次世代の学術研究を牽引する人材を輩出することかと思います。会員の皆様におかれましては上記の精神に従って、ご自身の信じる分子科学研究に邁進していただければ幸いです。みなさん、どんどん良い論文を書きましょう!
一方、分子科学会の持続的な発展のために、いくつか検討したいことがございます。 1点目は、会員の多様性の向上です。科学研究の健全な発展のためには、多様な考え方やバックグランドを持つ研究者どうしの相互作用が不可欠です。第一歩として、女性の研究者や学生を増やしたいと考えています。現在、一般会員の女性の割合は5ー6%程度で、他の学会と比べても著しく低いのではないかと思います。即効性のある妙案はありませんが、まずはダイバーシティーに関する国際的な価値観を共有することは、今後分子科学会が国際的なプレゼンスを示す上でも不可欠だと考えます。
2点目は、学生や若手研究者が伸び伸びと自由闊達に研究活動ができるように後押しをすることです。自主的な活動を支援する補助金も用意していますので、若手の皆さんには是非活用していただきたい。例えば、あるテーマについて仲間と講師を集めて研究会を開催するなどの活動を応援します。自分の研究を推進するために、こういう機会を積極的に利用し、周囲を巻き込む人間力を身につけていただければ嬉しいです。
3点目は、目がキラキラしている中高校生に分子科学研究の面白さや研究者の情熱を直接伝える場を設け、1人でも多くの若者を分子科学研究の分野に引き入れることです。例えば、討論会で周辺の高校生にポスター発表の機会を提供してはどうでしょうか?直接言葉をやりとりすることで子供たちの心を鷲掴みにすることができると思います。
会員の皆様におかれましては、ダイバーシティー・若手支援・アウトリーチについて価値観を共有していただき、改善に向けてご意見やアイデアをいただければ大変有り難く存じます。微力ながら、幹事や運営委員の皆様と一緒に学会活動を支えて参る所存です。これから2年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2022年9月1日
分子科学会第9期会長 佃 達哉