震災のお見舞いとMolecular Science第5巻公開のご案内

3月11日、未曾有の東日本大震災で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。また、一日も早い復興と、皆様のご健康を祈念いたします。

Molecular Scienceの第5巻目が電子公開となりましたことをお知らせいたします。今回は、Article2報、Award Accounts3報、Review5報、New Product4報の計14報すべてをフリーアクセスでご覧いただくことができます。

以下簡単な記事の紹介をさせていただきます。

Articleでは、田隅三生博士が、「どうすればインパクトのある研究を行うことができるのか?」という問いに答えるべく、研究の進め方について示唆に富んだ記事を寄稿して下さいました。また、吉原經太郎博士は、「超高速分光黎明期の回想」という題で、ナノーピコーフェムトーアト秒にわたるレーザー分光の目覚しい発展を、生き生きとした筆致で紹介下さっております。

Award Accountsでは、昨年度分子科学会奨励賞を受賞された志賀基之博士大村英樹博士池田勝佳博士ら新進気鋭の若手研究者に、受賞の対象となったご研究について力のこもった解説をご執筆いただきました。

Reviewでは、固相、理論計算、生体分子、気相、クラスター、界面表面分野におけるトピックスについて、若手へのメッセージも交えてご執筆いただきました。堀内佐智雄博士は、最近話題となっている「鉛フリーの新しい有機強誘電体」について、ご自身の物質開発の指針を交えながら、研究の集大成を執筆下さいました。大野公一博士と前田理博士は、ご自身で開発された化学反応経路自動探索法(GRRM プログラム)について、その内容から広い分野で「化学反応の道しるべ」として利用できることまでを解説下さいました。また、神取秀樹博士は、「生体のエネルギー・情報変換」として注目される光受容たんぱく質ロドプシンについて、博士がこれまで手がけられた分光学的な挑戦についてご紹介下さっております。市橋正彦博士は、「多彩な金属クラスターの幾何学、電子構造の魅力」を解説下さっております。さらに、大西洋博士は、大学院生にも理解できるよう非常にわかり易い文章で、光触媒他界面表面における博士ご自身の研究から、「表面一層だけでなく有限の厚さをもつ界面」における融合研究への展望までをご執筆下さっております。

New Productでは、会社製品と研究への橋渡しとなるような記事を執筆いただいております。今回は、ファイバマルチチャンネル分光器(NP0012)、エレクトロスプレーデポジション(NP0013)、高感度冷却CCD分光器を使った,コヒーレントラマン分光イメージング測定(NP0014)、フラグメント分子軌道法プログラム「PAICS」と統合創薬プログラム「NAGARA」(NP0015)の4記事が掲載されております。

大変アクセスの多いArchivesについては、山川紘一郎博士、杉本敏樹博士、福谷克之博士らによる「直線分子における鏡映操作とΣ-項について」が昨年12月に公開されております。また、平成21年12月に他界された安積徹先生の「学部学生のための量子化学ノート(前編)(後編)」は、年約4万回余ダウンロードされている人気の高いArchivesです。「教えることが生きがい」とおっしゃっておられた先生の教科書をメモリアルとして、j-stageにも掲載いたしましたので是非ご覧ください。

筆者が心をこめてご執筆下さいました記事は、分子科学分野の財産であると編集委員一同感じております。また、この分子科学の魅力を一般の方にも共有いただけるよう、Article、Award Accounts、Reviewは科学技術振興機構のj-stageにオープンアクセスで掲載しております。皆様に、是非ご覧いただければ幸いです。今後も、Molecular Scienceをご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2011年6月13日
編集委員長 森 初果