Molecular Science第6巻の道案内

WebジャーナルMolecular Scienceの第6巻が電子公開となりましたことをお知らせいたします。前第5巻では、「分子科学分野で、編集委員が推薦するトピックス」について、ご執筆いただきましたが、第6巻は、「現在、分子科学分野外であるかもしれないが、将来関連がでてきそうなトピックス」も含めて、記事をご寄稿いただきました。

第6巻は、Article2報、Award Accounts2報、Review7報、New Product7報の計18報で、すべてフリーアクセスでご覧いただけます。以下、記事の簡単なご紹介です。

Articleでは、スウェーデンの著名な量子化学者、故Björn Roos 博士から、分子科学に携わる学生、研究者への力強いメッセージ”Save the Planet”を、長谷川淳也博士、渥美裕子博士の日本語訳、R. Lindh博士のお言葉と共に掲載しております。また、分子科学研究所元所長で理研ディレクターの茅 幸二博士より、先生の研究者人生と、分子科学の未来への熱い想いについてご寄稿いただきました。

Award Accountsでは、第2回分子科学奨励賞を受賞され、現在第一線でご活躍のお2人に、受賞記念解説記事をご執筆いただきました。足立純一博士には、放射光を用いた分子の励起状態の研究として、「気相分子についての軟X線分光手法の開発と光電離・光解離ダイナミクスの研究」を、松下未知雄博士には有機スピトロニクスの物質開発として「有機ラジカルスピンに基づく磁性―伝導性共存系の構築」をご紹介いただきました。

Reviewの7記事では、各先生方の研究テーマとの出会いから、最先端の研究内容について、さらには分野の最近の動向も含めてご寄稿いただきました。先生方が研究に立ち向かう姿勢は、分子科学の若手への力強いメッセージとなっております。
将棋ソフト「Bonanza」の開発者として著名な保木邦仁博士に、「化学とゲーム情報学の意外な接点」についてご寄稿いただきました。広島大学の江幡孝之博士と井口佳哉博士には、「包接錯体のレーザー分光」と題して、包接化合物の補足メカニズムの解明に迫る、ホストーゲストの研究について解説いただきました。また、有機薄膜太陽電池の草分けである分子研の平本昌宏博士には、ご自身の研究を含めた最近の動向と分子科学における課題についてご寄稿いただきました。理研の山崎泰規博士には、最近注目されている反物質研究について、分子科学への期待と共にご執筆いただきました。さらに、千葉大学の西川恵子博士と森田剛博士には、ライフワークとされている「ゆらぎの科学」について、数々の複雑凝集系のご研究の中から、溶液の混合に焦点を当ててご紹介いただきました。また、首都大学の阿知波洋次博士には、フラーレンからカーボンナノチューブまで、ナノカーボンの成長機構解明を目指した四半世紀にわたる物性研究について、ご執筆いただきました。首都大学の春田正毅博士には、ご自身が見出された金ナノ粒子触媒について解説いただきました。

New Productでは、会社の製品パンフレットから一歩踏み込んで、製品がどのように研究に展開されるのかを示した記事を掲載しております。今回は7記事で、「タンパク質の凝集性向を予測するDS Protein Aggregation(AggMap)(NP0016)」、「ハイパースペクトラルイメージセンサ:VERDE (NP0017)」、「2波長対応回転対陰極体システム”MicroMax007 VariMax DW”(NP0018)」、「電子エネルギー分析器コムストックAC-900シリーズ(NP0019)」、「常に完全(100%)分類を実現するKY法の開発(K-step Yard sampling methods)(NP0020)」、「GPGPUで実現するバーチャルスクリーニングのための高速分子形状比較プログラム”FastROCS” (NP0021)」、「Induced-Fitを考慮したGlide/Primeによるタンパク質-リガンド相互作用解析(NP0022)」です。

Archives(教育的価値の高いテキストのライブラリー)の記事は、公開当初より人気が高く、安積徹先生の「学部学生のための量子化学ノート(前編)(後編)」は、年約4万回余ダウンロードされております。すべて査読を経ており、読者からのコメントを反映して、版を重ねているところが特徴です。

以上簡単な道案内ですが、是非記事をご覧いただければ幸いです。分子科学の魅力を、分野外の方にも感じていただけるよう、Article、Award Accounts、Reviewは科学技術振興機構のj-stageにオープンアクセスで掲載しております。今後も、Molecular Scienceをご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2012年6月21日
編集委員長 森 初果